東京高等裁判所 昭和33年(ラ)231号 決定
本件記録によると、次の事実を認めることができる。鑑定人森好忠は原裁判所の評価命令に基いて本件競売建物を調査した上、本件建物はその実測の建坪は合計二百七十四坪八合で、その価額は金百九十二万四千円であると評価し、昭和三十年四月二十八日附を以てその旨を記載した評価書を原裁判所に提出し、原裁判所は右評価書の記載に基いて本件競売手続を進めたのであるが、競売期日に競買の申出をするものがないため、競売期日は数回延期せられ、昭和三十二年八月二十三日の競売期日に小川加寿代が最高価競買申出をなし、原裁判所は同月二十九日の競落期日に右競落許可決定を言い渡したが、抗告人の抗告申立に基く再度の考案によつて同年十一月十六日右許可決定を取り消し右競買人の競落を許さない旨の決定をした。そして原裁判所は新競売期日を昭和三十三年二月十四日と定め、右期日に競売を実施させた結果、小川美代三が最高価競買申出をなし、同年四月九日本件競落許可決定が言い渡されるに至つたものである。ところで抗告人提出にかかる疏第二号証、第四号証及び第六号証によれば、前記有限会社は本件建物を抗告人から賃借した後、これに増改築工事をした結果、現在本件建物の総建坪は三百四坪五合となつていることを認めることができる。してみると、鑑定人森好忠の評価書記載の実測建坪と比較して二十九坪七合増加しているのであつて、しかも前記認定のとおり右鑑定人の評価したときから、原競落許可決定がなされるまで、既に約三年を経過しているのであるから、本件建物についての右鑑定人の評価額は右評価当時において相当であつたとしても、原決定当時からみれば、本件建物の評価額としては必ずしも相当であるとは断定しがたいから、このような場合には競売裁判所としては鑑定人をして改めて現時の競売建物の評価をさせ、その評価額を基礎として競売手続を続行させるのを相当とする。しかしながら、右のような増改築が本件競売申立の登記後になされたとすれば、再鑑定を命じて最低競買価額を改めないことが抗告人主張のように違法だとまではいえるかは問題である。
(村松 伊藤 小河)